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クレンチング症候群って何?くいしばりの癖は放置すると怖い!

歯を失う可能性も放置すると怖い「クレンチング症候群」って何? 

気付くと、無意識のうちに「歯を食いしばっている」…。そんな行動に心当たりがある場合、それは「クレンチング症候群」と呼ばれる癖かもしれません。クレンチング症候群を放置し、無意識に歯を食いしばり続けていると最悪の場合、歯を失う原因にもなり得るといわれているようです。 クレンチング症候群とは、どのようなリスクをはらんでいる癖なのでしょうか。

「怒りっぽい性格」も原因の一つ?

Q.「クレンチング症候群」とは何ですか。 石川さん「通常、食事時以外で上下の歯が接触している時間は、実はかなり短いです。何もしていないときには、『安静時空隙(あんせいじくうげき)』といって、上下の歯の間に1~3ミリ程度の隙間があるのが正しい状態と考えられています。 何もしていないときにも、さまざまな動きとともに上下の歯を不必要に接触させていることを、医学的な総称として『ブラキシズム』と呼び、その接触の仕方によって次のように分類されます。この中でも(1)のことを、日本では『クレンチング症候群』(かみ締め症候群)と呼びます。
(1)クレンチング…同じ位置で歯をグッと食いしばる
(2)グラインディング…ギリギリと横にスライドさせるように歯を擦り合わせる
(3)タッピング…無意識にカチカチと歯を何度もかみ合わせる
(4)TCH(Tooth Contacting Habit)…無意識のときに、歯が常に軽く当たっている なお、起きているときの歯ぎしりを『覚醒時ブラキシズム』、寝ているときの歯ぎしりを『睡眠時ブラキシズム』と呼ぶなど、タイミングによっても2種類に分けられます」

Q.クレンチング症候群の原因とは。

「さまざまな原因が考えられていますが、身近なものとしては精神的ストレス、飲酒、喫煙、怒りっぽい性格などが挙げられます。また、うつ病や、精神病薬の副作用、遺伝的な問題なども原因として考えられています。 なお、論文によっては『女性に多い』『結婚している人に多い』という記述、さらには『コーヒーを多飲する人に多い』といった記述もあります」

Q.クレンチング症候群を放置すると、どうなることが考えられますか。

「クレンチング症候群を放置することによって、次の6つの弊害が考えられます」 ・歯自体に過度な力がかかり、歯に亀裂が入ったり、擦り減ったりする ・歯に入ったひびや亀裂などから刺激が入りやすくなり、知覚過敏になる ・歯の周りの組織に過度な力がかかり、歯が揺れたり、歯周病が悪化したりする ・顎の骨にも力が伝達し、骨が盛り上がる「骨隆起」が起こる ・下顎の関節に過度な力が伝達し、「顎関節症」が発現する ・そしゃく筋の痛みによって頭痛などが生じる

クレンチング症候群に気付くための「8項目」

Q.自分がクレンチング症候群かどうかを知るための方法はありますか。

「次に挙げる8項目を確認することで、セルフチェックができます。一つでも当てはまる場合は、クレンチング症候群の可能性があると考えてよいでしょう」 ・前歯以外の歯の先端が平らになっている ・歯茎に骨の盛り上がりがある ・歯の根元が欠けている ・朝起きると顎に痛みがあったり、こわばる感じがあったりする ・肩こりや頭痛が強くある ・舌の側面や、頬の内側の粘膜が歯の形に変形している ・虫歯などがないにもかかわらず、歯が染みる ・事故や外傷などではなく、歯が欠けたことがある

Q.クレンチング症候群は治すことが可能ですか。

「起きているときのクレンチング症候群は、意識次第で改善できる可能性があります。しかし、寝ているときのケースでは無意識下で行われることもあり、根本的にクレンチングをやめさせるための、医療的に確固たる根拠を持った治療方法はありません。 歯科医院では、クレンチング時にかかる強い力から、歯や骨、顎の関節を守る目的で保護用のマウスピースを作成したり、そもそものかむ力を弱める目的でボトックス注射を行ったりするなどの処置を選択します。また、クレンチングそのものではなく、クレンチングでかんだとき、一部の歯に力がかかってしまうような歯並びの悪い部分の矯正治療を行ったり、知覚過敏の生じている歯のケアなどを行ったりもします。 家庭での対処法としては、まず、自分のクレンチングに対して意識を向けることです。自分が歯ぎしりをしてしまうタイミングや、ふとしたときに上下の歯が当たっていないかを意識して、『なりやすい時間帯』『なりやすい状況』を把握することが第一となります。第二として、それらを把握した上で、歯ぎしりをしてしまう状況時にできる限り歯ぎしりをしないよう意識して、肩の力をスッと抜くことなどが考えられます。 また、アルコールやたばこなども原因として報告されているため、それらを控えてみたり、睡眠の質を高めるために枕や布団にこだわってみたりするのも、一助になる可能性があるでしょう」