大いびき、500万人が睡眠障害
大いびき、昼間の眠気に注意=500万人が睡眠障害
就寝中は断続的に激しくいびきをかき、昼間に強い眠気に襲われるのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)=用語説明参照=だ。この病名は2003年に新幹線運転士が運転中に居眠りしてしまった問題などで広く知られるようになったが、実際の症状や治療法はまだまだ知られていない。
治療、患者の10%程度か
国内のある研究では成人男性の9%、女性の3%が発症しているとされるので、患者数は500万人以上と推定される。しかし、必要な治療を受けている人は10%程度にすぎず、診断・治療を受けていない患者が大半を占めるとみられる。
昼間の強い眠気や度重なる居眠りが問題というイメージがあるSASだが、高血圧や動脈硬化を引き起こしたり、症状を悪化させたりするケースもあるのでやっかいだ。高血圧の治療でなかなか効果が上がらなかったり、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクを高めたりする危険性が考えられる。SASは睡眠障害だけでなく、全身疾患の一つとしてとらえるべきだ。SASを発症した場合、本来熟睡中は沈静化している交感神経が刺激されて副交感神経に対して優位になり、動脈硬化を促進してしまう。そして動脈硬化は高血圧症の誘因になり、心筋梗塞や不整脈の発症リスクを高める。
専門医が継続的関与を
減塩など食生活の改善や降圧剤服用などの高血圧治療がなかなか効果を上げない場合は、一度SASを疑って医師に相談してみるべきである。SASを合併している高血圧患者は、心臓や脳の重い病気を引き起こす可能性がより高い「早朝高血圧」などを引き起こしやすくなるからだ。治療としては、就寝中の口呼吸を避け気道を確保する方法が有効。マウスピースの装用や、一定圧の空気をマスクから送り続ける「経鼻的持続陽圧呼吸法」(CPAP治療)があり、どちらも一定の診断基準を満たせば健康保険が適用される。
【用語説明】
睡眠時無呼吸症候群(SAS) 就寝時に何らかの理由で気道が閉塞し、断続的に無呼吸に陥る症状の総称。酸欠状態で断続的に覚醒(目覚め)を繰り返すが、覚醒自体は短時間のため記憶されない。睡眠の質が悪化して昼間に強い眠気を感じるほか、酸欠を補うために大きないびきをかくことが多い。診断は指先にセンサーを装着して就寝中の血中酸素濃度を測定し、疑いが強い場合は一泊入院で、頭部などにセンサーを着けて脳波を測定することもある。
経鼻的持続陽圧呼吸法(CPAP治療) 現在のSAS治療の中核で、鼻に装着したマスクをコンプレッサーに接続し、就寝中一定の気圧で空気を鼻から気道に送ることで閉塞を防ぐ。1981年に開発され、98年に健康保険の適用となっている。ただしSAS患者すべてに適用は認められず、一定の条件を満たす必要がある。