入れ歯安定剤について
2015年3月4日(水)配信毎日新聞社
大型のスーパーやドラッグストアが増え、入れ歯安定剤が簡単に手に入るようになり、歯科医院に通わずに入れ歯安定剤を使用している方も大勢いらっしゃるかと思います。また、老人ホームや一般病院などでも使用されているために、不適切に使用されていることも多いと考えられます。
歯科医師は、入れ歯安定剤を使用する必要のない入れ歯を提供しようと努力をしてきたため、少し前までは入れ歯安定剤に対 して批判的な態度をとってきました。しかしながら現在では、緊急を要する場合や高齢、もしくは病気などで歯科医院に通うことが出来ない場合もあるため、完全に否定するというわけではありません。
もちろん歯科医師としては、入れ歯が合わなくなった場合は調整もしくは新たに入れ歯を作製するこ とをお勧めしますが、体調不良で歯科医にかかることが出来ない場合や、入れ歯の修理などで不安定な場合などの短期間にのみ、入れ歯安定剤の使用を認める方向になってきているのです。
そもそも、入れ歯が合わなくなったという理由には大きく二つの原因が考えられます。一つは入れ歯の歯が擦り 減って噛み合わせが悪くなった場合、そしてもう一つが歯ぐきが痩せた場合です。入れ歯安定剤とは、入れ歯が外れやすい、入れ歯が動く、入れ歯の裏に物食べ かすが詰まりやすいという症状に対して効果を発揮するものなので、入れ歯の歯が擦り減った場合には効果はありません。間違った使用をすることによって、入 れ歯が破損したり、歯ぐきが更に痩せてしまったりすることもあるのです。
このようなことを理解した上で、入れ歯が合わない場合はまず歯科医師に相談し、入れ歯安定剤を使用する場合は歯科医師の管理のもとで行われることをお勧めします。
(府歯科医師会学術部)